失われた 30 年と言われる平成が終わりました。この間、我々は何をしてきたのでしょう
か。負の遺産を積み上げ、バブル経済に酔い、幻の高度成長を追いかけてきたような気が
します。
中小企業は日本の経済に大きな役割を担ってきました。中小企業向きの仕事も十分にあ
りました。しかし、今ではかつてのように下請けの仕事は降って湧いてきません。中小企
業には今の時代を生き残るために必要な経営革新による成長が求められます。
経営内容の優れた中小企業は、事業の小さな変化を見逃さず将来の発展につなげていく
絶えざる創意を凝らしています。
本稿では、中小企業を支援するコンサルタント(コンサル)に求められる、創意を促し、
持続可能な「中小企業を革新に導くイシューの共有(企業の宝探し)」を提言してみたいと
思います。
「いままでうまくやってきたのだから多少苦しくても現状どおりやっていた方が間違い
ない。」「それだけの投資もしてきたし現状を変えるのは嫌だ。」行動経済学では、このよう
な現状維持が良いと感じてしまう心理を、現状維持バイアスとか、サンクコストバイアス
と想定しています。
中小企業の経営者には苦労して会社を軌道に乗せた人が多く、現状の経営を変えること
には心理的に抵抗があるようにみえます。心理的な意思決定のバイアスが解かれて革新的
な経営が展開されるなら中小企業をはじめとする日本経済はもっと元気が出て、活力が生
まれます。
コンサルは、クライアント企業に革新を起こすきっかけ作りとして、当該企業の存続発
展のために取り組まなければならない問題、すなわち、イシュー(Issue)は何なのかを、
経営者とともに突き詰めて考えてみることです。換言すれば、当該企業が潜在的に持って
いる宝探しのお手伝いをするのです。
現代社会は、VOCA(ヴーカ)ワールドといわれています。VOCA とは、Volatility(変動
性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を集めた
ものです。世界中がインターネットでつながり複雑で多様な情報が錯綜しています。ま
た、政治、宗教、気象変動など企業を取り巻く環境は変転として予測不能な状況にありま
す。
当該企業の Issue の認識は、置かれている状況を疑ってみることからスタートすべきで
す。昔の常識・理論は通用しない社会になっているからです。コンサルは客観的な情報を
伝えられる有利な立場にあります。
人は様々ですからいろんな考えがあります。しかし、空理空論をもてあそぶコンサルで
は、Issue の認識は進みません。まずは、仮説思考(アブダクション)をとってみて、創
発(アイデア)の検証をサポートしてみませんか。
「想像できないものは創造できない。」といいます。次の時代にあり続けるための事業を
想像できない企業はいずれ淘汰されます。企業を成長路線に乗せるためには、社員が共有
できる企業理念や事業目標が明確でなければなりません。Issue の共有認識は、企業の存
続に関わる次の事業目標の達成に向かって事業活動の生産性を高めるために不可欠なこと
です。
当該中小企業が Issue は何なのか組織として認識する方法として STPD の実践を次に提言
したいと思います。
☑当該企業の Issue、すなわち何が問題なのか現状認識を分解し(See)、どのように解
決できるか考え(Think)、スト-リーだてしてみる(Plan)。ストーリーが納得いくも
のか、事業コンセプトを言葉に表してみる。
☑ストーリーを、順序だてて図表にしてみて、図表にしたアイテムを一つずつその可能
性を検証し、実行してみる(Do)。
なお、中小企業が社員と Issue を共有し、STPD を実践する過程で、信頼できる経営コン
サルの支援を仰ぐことは有効です。自己満足な計画倒れに陥らないようにするためです。
事業の再構築、M&A、事業承継、新分野開拓、新製品開発等をお考えの事業者様、貴社の
Issue を議論するなかで、貴社に眠っている宝探しをご一緒にいたしませんか。
【ご参考】
「創発力を高めれば、企業を持続的に成長させることができる」
https://drive.google.com/file/d/1i88Q88MKSz3t6RG0fFsJjr3g5HOL7gWY/view?usp=sharing